フランス額装するものについて
- ke1k0-sa1to
- 2023年9月2日
- 読了時間: 4分
更新日:2023年9月22日

フランス額装は、なにを額装するのですか?という質問を受けたりします。じつは、なんでもいいのです。
版画でも、絵画でも 写真、ポストカードでも、なんでも。
私は、腕時計や指輪、アクセサリーなどの立体のものなども額装します。子供用ですがコートも額装したことがあります。それから、子どもが作った粘土作品や、廃材でつくった壊れそうな作品、とか。額の中に入れると、保存性があるので、子どものつくった壊れやすいもの、などはとてもいいです。
それからコレクションしているもの。わたしはボタンを捨てることができなくて、かわいいボタンがあると、箱にしまって、もう長年集めているので、たくさんたまっています。その中から、気になった物を額装してみました。
ボタンは 暑さがあるので 10ミリくらいの壁をつくり、全面のガラスに当たらないようにします。赤いクマのボタンは、子どもの頃からもっていて2つで150円の値札がついていました。今じゃ考えられない値段です。でもこれは 洋服にはつけませんでした。しまっていてもつまらないので、出してみることにしました。額の中でレイアウトを考えるのも楽しいですね。きちんと並べてもいいし、ランダムにおいてもいい。それから、思い出のある服のボタン、とか。制服のボタンもいいかもしれません。黒い額縁は、強くて、なかなか使いづらいかもしれませんが、今回の額装は、ちょっとブティックぽくなりました。

これは、ベビースプーンの額装です。
ポストカードサイズの額縁にちょうどはいっています。
息子が生まれたときに、銀のスプーンを贈っていただき、今でも大切にしています。
こういうものもフランス額装にはピッタリです。ティファニーのものなので、イメージカラーをティファニーブルーにするかとも思ったのですが、手持ちの、新しくつくったマーブル紙で1番しっくりくるものにしました。
マットのデザインも左側と上部を45度にしかも厚さ2倍でカットして、アシンメトリーになるようにしています。スプーンは透明の糸でとめていますが、下の部分にわずかにひっかかりをつけています。同じ構造でも、貼り込む紙や布の表情や色合い、組み合わせによって、印象はかわります。自分で額装できるようになると、つくって飾ってみて、毎日なんとなくみながら、ここはこうしたほうがいいかも、とか、こんな色合いもいいかも、とか 思いつくことがあります。そうしたら、またつくってみたらいいのです。もっといいものができるかもしれませんし、また雰囲気がかわって楽しくなるかもしれません。
フランス額装は、小さな世界だと思います。でも 思いや、イメージやストーリーを落とし込むことが自由にできて、ひとつ壁に飾ると、インテリアのポイントになります。
わたしはいつも 自分でみてニコニコしていますが、お客様がいらしたときの話のきっかけになったり、と 大活躍します。こうやってみると、きっと誰しも 額装したらいいのに、というものをしまい込んでいるのではないかな、と思います。みつけてみると楽しいですね。
こんなことを書いていたら、日曜日の朝、友人3名からほぼ同時にLINEがはいり、NHKみて、額装の話してる、と。早速テレビをつけると、亡くなったお母様の漬けた最後の梅干しの額装を依頼した学芸員さんのご家庭の話。亡くなったばかりで、ご家族でお母様の話をすることができずにいて、額装することをきっかけに思いに1区切りつけられるのではないか、と額縁店に依頼されたそう。わたしは普段、ナマモノ以外は額装できます、と話してますが、保存食品はいけますね。開封してないジャムとか梅干しとか。たしかに。このご家庭では、やはりこの額装が出来上がり、額装がきっかけでお母様の話がすこしずつできるようになったそうです。とても素敵なお話でした。
このことで思い出したのが、わたしも10年前、息子が高校を卒業するのと同時に大学の寮にはいることになり、子育ても一区切り、と思い、子どもの作品を額装して個展をしたことがありました。一つ一つ、子どもがつくったものを額装するために向き合って、それはとてもいい時間になりました。そのテレビプログラムでも、額装は、人生の区切りにもなる、と話していて、まさにそれ、と思います。
Comments